コラム

2012/05/12

後戻りしない決意(東京・UT)

後戻りしない決意

▼国交省が2004年度から試行していたユニットプライス型積算方式を、3月末に廃止した。従来の積上積算方式が材料単価や労務単価、歩掛など建設生産システムにおける最下層の取引価格をベースとしているのに対し、ユニットプライスは受注者との取引価格という、最上流段階をベースとする点が最大の違いだった。

▼積算が効率的になり、価格の説明性が向上する一方で、低入札の多い市場環境では低い落札率がダイレクトに反映され、予定価格のデフレスパイラルに拍車がかかる―と懸念されていた。この点は今回、廃止された主要因にもなっている。

▼10月から新たに登場するのが施工パッケージ型積算方式。ユニットプライスの課題を解決するため、受注者のみならず、落札できなかった応札者の単価なども活用し、デフレを緩和させる。また標準単価に加え、積算に必要となる地区と年月の補正式を公開し、透明性を向上させている。

▼国交省OBから、積算労力の負担感の大きさについて聞いたことがある。事務所職員の業務が多様化している中で、予定価格の算出にエネルギーを注いでいるものの、「大半の入札では、判で押したように調査基準価格付近で落札される」。契約後は受注者があらためて詳細な見積もりを取り、実行予算を作成。現場は実行予算に基づいて動くため、労力をかけた予定価格算出作業は「一体何だったのか」といった気持ちにもなるという。

▼積算の簡素化は、多くの職員が望んでいた。ユニットプライスで既に方向性は打ち出されていたが、今回の施工パッケージで、後戻りしない決意を示したと言える。(東京・UT)

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