コラム

2012/06/15

特化する強さに酔う(東京・HM)

特化する強さに酔う

▼先日、妻とドライブ中に偶然いい酒屋さんを発見した。日本酒が多く、特に純米酒にこだわりがある。そして店主は、客の求める日本酒を売ることにまったくの妥協がない。「おいしいものはすぐに飲んじゃうから、また買いに来てくれる」と言う。

▼日本酒は本来、米と米こうじと水のみで造る。これに醸造アルコール(焼酎)を加えたものが純米酒ではない日本酒。アルコール度数を下げるために加水する。結果、味が薄くなるから調味料も加える。戦後、ものがない時代に生まれた、増量のための技法。

▼筆者は、日本酒ならばどちらかというと純米酒を選ぶ。新潟系のすっきりしたものより、東北系のねっとりとしたお酒が好みで、米の香りが強い純米酒は特においしい。純米酒かどうかをあまり気にしない酒屋さんも多いので、この店はありがたい。

▼店主に、妻が好みを伝えると、試飲用の瓶があっという間に6〜7本並んだ。しかも驚いたことに一本一本に自家製のタグが付いている。それには、銘柄やアルコール度数はもちろん、日本酒度、強度、使用酵母、仕込水、そして店主自身の感想などが細かく書いてある。項目ごとの解説も別にあり分かりやすい。日本酒、特に純米酒好きにはたまらなく楽しいお店だ。

▼芳名帳に名前を書くと、仕入れたお酒の情報などを毎月送ってくれると言う。それを見ると、大坂など遠く県外の住所も多くある。特化することの強さを垣間見た。その夜、いいお店に出会えたことを祝って、妻が選んだお酒で乾杯した。優しいが、しっかりとした香りと甘み。とがったところが1つもない柔らかい北のお酒だった。(東京・HM)

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