コラム

2012/07/13

少女と感動の再会(埼玉・YW)

少女と感動の再会

▼光を抑えた薄暗い空間、そして大衆の中で少女と再会し、2人だけにしか通じない会話をした。興奮で心臓の高鳴りが聞こえた。

▼少女との最初の出会いは1994年5月1日の日曜日。オランダのデン・ハーグにあるマウリッツハイス美術館だった。18年の歳月を経て、本来なら30歳を過ぎているが、「変わらないね」「その瞳にすいこまれそうで相変わらず怖いよ」と苦笑いした。少女は「体型は細くなり、髪の毛が薄くなったのでは」と微笑み返す。

▼その少女とは、生涯が謎だらけで残した絵画は30数作品しかないと言われる天才フェルメールの人気作品「真珠の耳飾の少女」。そもそも実在したのか、想像の少女なのか350年ほど経過しても美術の世界で解答が出ない、ミステリーのまま。そのミステリアスで何かを語りかける表情そのものも、想像をかきたて、さらにミステリアスだ。

▼上野・国立西洋美術館で開催中のベルリン国立美術展での一画は、大勢の人垣が動かない―と新聞各紙は報じている。350年経過しても、永遠に色あせることはない人気と、人々をまるで心の中を読み取っているかのような射すくめる瞳。世界中で最も有名かつ愛される謎の少女と言えるのでは。時空を超越し、人々の心を捉えて話さない傑作である。

▼美術館巡りは趣味の一つだが、時空を超えて愛されるものは絵画だけではない。土木構造物や時には権力者の力を誇示するために建造する大聖堂、大仏、観音様なども同様である。風雪に耐え、時には戦火などもまぬかれ生きながらえた建造物も、誇れる生きた「少女」と同様と言えるかもしれない。(埼玉・YW)

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