コラム

2012/10/11

想定外が許されないならば(東京・UT)

想定外が許されないならば

▼治水治国―。古くから、水を治めることは国を治めること、という考えがある。武田信玄の「信玄堤」はあまりにも有名。関東地方整備局は流域面積日本一で、かつ人口が集中する首都圏を流れる利根川の河川整備計画を策定する。

▼この計画は、昨年末に事業継続が決まった八ッ場ダム本体工事の着工条件となっているため、注目度が非常に高い。策定に先駆けて同局は5月、「今後20〜30年間で目指す安全の水準についての考え方」を提示した。その内容は治水安全度70分の1〜80分の1、というもの。これは70〜80年に1回の規模の洪水に対応することを意味している。

▼治水安全度に相当する目標流量は、八斗島地点(群馬県伊勢崎市)で毎秒1万7000立方メートル。この数字を達成するための具体的な施設整備計画をこれから仕上げていく。八ッ場ダム建設反対派からは目標流量の毎秒1万7000立方メートルに関して「過大」「ダムを造るための数字合わせ」といった声がある。

▼1997年の改正河川法のポイントは「地域の意見を反映した河川」という点にある。河川整備計画の策定プロセスでは、関係住民や有識者の意見を聞かなければならない。利根川に関しても、多様な意見を聞いた上で、同局が河川管理者として最終的にまとめる。

▼東日本大震災で、地震や津波の大きさに関して「想定外」というフレーズが批判を浴びた。3・11以降、世論により、この言葉を使うことは封じ込められた。そうであるならば治水は、ゲリラ豪雨などの異常気象に対応すべく、ハード・ソフトの両面で限りなく高い目標を掲げなければならない。(東京・UT)

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