奇跡の新幹線軌跡(新潟・ＫＫ)

奇跡の新幹線軌跡

▼夢の高速鉄道といえば、ＪＲ東海が計画しているリニア中央新幹線だろう。開通はまだ先の話だが、最高設計速度が時速５００?を超え、東京〜大阪間を約１時間という、信じられない程の速さで結ぶリニア中央新幹線は、まさに夢の高速鉄道だろう。

▼東京駅と新潟駅を結ぶ上越新幹線も一昔前は夢の高速鉄道だった。日本有数の雪国を通り、かつ新潟県と群馬県境にある三国峠を越えるための中山トンネルの工事は苦難の連続となったが、数々の大きな壁を乗り越えて開通した上越新幹線は、ことし11月15日で開業30周年を迎える。

▼上越新幹線は「奇跡の新幹線」とも言われる。記憶に新しいのは２００４年の新潟県中越地震の際の脱線事故だろう。中越地震により、我が国の新幹線の歴史上唯一の脱線事故を起こしながら、負傷者が出なかったことは、奇跡であるとともに新幹線の安全性の高さを証明することにもなった。

▼また、中山トンネルの掘削は想像を超える難工事だった。異常な湧水の影響でルート変更を余儀なくされたほか、大清水トンネルの工事では火災が発生するなど、多くの困難を克服し、奇跡の開通に漕ぎ着けている。

▼雪国・新潟の人は、かつて特急で４時間以上かけて新潟駅から上野駅まで行っていたが、上越新幹線のお陰で今は約２時間で行けるようになった。14年の北陸新幹線開業を控えて、枝線化や減便も懸念される上越新幹線だが、今後も山形方面へのアクセス改善、沿線や北東アジアを含めた観光交流の促進などで一層の活躍が期待されていることから、新たな「軌跡」を生み出していくに違いない。（新潟・ＫＫ）