コラム

2012/10/27

言葉と響きのイメージ(東京・HM)

言葉と響きのイメージ

▼清代の中国を舞台にした浅田次郎氏の小説を読んでいる。「蒼穹の昴」に始まり、「珍妃の井戸」と続き、今は「中原の虹」の途中。列強に蝕まれながら、徐々に清朝が衰弱していく様をそれぞれの立場の登場人物を丁寧に描きながら追っていく。一見、難しそうに感じるが、読みやすく、気が付くと物語に引き込まれている。

▼この小説では、登場人物の名称は、中国読みのルビで振ってある。例えば、日本では「せいたいごう」と呼んでいる西太后は、「シータイホウ」。考えてみれば当たり前の話であるし、この作品で描かれている優しげな西太后には「シータイホウ」の響きの方が似合う。

▼「土方(どかた)」という呼び方は差別用語とされている。戦後の日雇い労働者の飯場のイメージ。きつい・汚い・危険、3Kをイメージさせることから、今では技能労働者や技能者と言う。確かに「土方」には、マイナスのイメージがあるかもしれないが、その響きは直接的で分かりやすくもあった。

▼若手の人材確保に積極的なある建設企業の社長と話した時に、「大学などへ出前講座に行くと、建設業が何をしている業界か本当に知られていない」と言う。確かに一般の人には縁遠い業界だが、「技能労働者」のような呼び方も分かりにくくしている1つの原因のようにも思える。

▼今さら呼び方を「土方」には戻せないが、これからは「技能労働者」と言われて、ああ、建設現場で働いている人か、とイメージされるようにしなければならないだろう。建設業の魅力をPRすることも必要だが、言葉のイメージを定着させることも求められるのでは。(東京・HM)

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