2013/02/20
中途半端の悔恨(群馬・KS)
中途半端の悔恨
▼「チーズは冷蔵庫に入れないと腐るでしょうが!」極寒の地で説得され、渋々チーズを2時間ほど
冷蔵庫へと納めた。言い分としては「飛行機が冷蔵庫になるから安心だしチーズは腐っているから大
丈夫だ!」と腐食論まで持ち出したが敗北した。ドイツの友人宅でチーズについて交わした会話の一
節である。
▼何をするにも中途半端ですぐ飽きる筆者だが、楽しいと感じることだってある。継続してすでに何
年になるか、外国語の勉強である。勉強は苦手だがいまでも少しばかり続いている。下手な言葉で会
話することは面白くチーズ論争もそのひとつ。
▼外国語に一層興味を持ったのは寒さが凍てつく今頃の季節だった。ドイツで路面電車に乗り市外へ
向かう途中、肌を刺す冷気とともに「さぶい、さぶい」と白い息を吐く2人の淑女が乗り込んできた。
あぁでもない、こうでもない。彼女たちが電車の中で始めた世間話に強ばった肩の力が抜けていった。
▼ちっぽけな出来事はちっぽけな日本人が抱く外国語への興味を一層つのらせるものにした。まだま
だ発展途上の筆者のドイツ語。未熟な母国語を差し置いていつの日か「ドイツ語馬鹿」と呼ばれる程
にまで成長できるのかどうか。中途半端を卒業するには、もうひと努力が不可欠と自覚しているもの
の実践するのは難しい。
▼チーズを冷蔵庫に入れる、入れないであれほど激論を交わすことはもうないだろう。半分本気、半
分おふざけ。どうやって相手を自分の意見下に落とすかの遊びも、つたない言葉が邪魔をする。中途
半端を卒業していればチーズは冷蔵庫に入らなかったかもしれないのに。(群馬・KS)