コラム

2013/05/17

増した辞書への愛着(茨城・HS)

増した辞書への愛着


▼友人に勧められて三浦しをん原作の映画『舟を編む』を観た。きっかけは「辞書をつくる話」とい

うCMで知ったこと。小説を読んでいた友人は面白かったと言っていたが、題材が題材だけに、正直

なところ期待せずにいた。ところが、蓋を開けてみると、思いのほか興味深く好奇心を注がれた。


▼主人公は出版社に勤める馬締(まじめ)青年。名前に違わず真面目な青年だが、少々社会性に欠け

る部分もある。営業部から辞書編集部へ抜擢され、辞書「大渡海(だいとかい)」をつくることにな

るのだが、その作業は一筋縄ではいかなくて…というのが簡単なあらすじだ。


▼最初は「地味だなぁ」と思いながら観ていたが、用例の採集が始まる等の場面から引き込まれた。

用例採集とは、辞書に載せる言葉とその説明を書き留めること。映画の時代背景は1995年。PC

や携帯電話などはまだ一般的でなかった時代。彼は知らない言葉を聞くとすぐに用例採集カードを作

成する。


▼知らないことはすぐに調べ、知っている人に話を聞く。新しい言葉を得るために、辞書監修の老先

生とともに若者向けのファーストフード店へ行く。そうした地道な作業の1つ1つが、辞書を肥やし

ていく。これはテーマ取材や調査報道に近い。


▼新聞と出版に15年もかかる辞書は全くの別物だ。しかし、その制作過程に問題意識は欠かせない。

知らないことをそのままにせず、すぐに調べて自分の知識にする。基本的な作業だが、最近は「後で

ネットで調べればいいか」と怠けてしまうことがある。映画の鑑賞後、本棚の隅で小さくなっていた

辞書を手の届くところへ置くようにした。(茨城・HS)


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