コラム

2013/07/12

とらわれない龍馬の魅力(茨城・MK)

とらわれない龍馬の魅力


▼日本の歴史上人気のある英雄の一人が坂本龍馬である。各出版社の歴史人物企画でも、戦国の英雄

と競って第一号として出版される。土佐の郷士でしかなかった龍馬が人気なのはなぜか。


▼新婚旅行もブーツを穿いたのも、会社設立も日本初尽くし。龍馬の実績で有名なのが、対立してい

た薩摩藩と長州藩を結びつけた「薩長連合」。感情的なわだかまりを持つ両藩だったが、龍馬が設立

した商社で後に海援隊となる亀山社中が仲介し、薩摩などから買った武器を長州に売り渡す。感情論

よりも実質で両者を近づけた。連合調印の際にも龍馬は調停に走り回り、「メンツのためではなく、

日本のためにやっているのだ」との思いが通じて連合は成立する。


▼お膳立てしたもう一つの功績が「大政奉還」の元になった船中八策。勝海舟など多くの識者や商人

と交わっていた龍馬は、政権返上後の新政府を雄藩連合と考え、平和的に交代させるため、裏方で奔

走した。


▼しかし、龍馬は新政権を担う人物として自分自身は考えていなかった。薩長連合、大政奉還の立役

者ならば新政府に入ってしかるべきと言われたが「わしは世界の海援隊をやるんだ」と答えたのは有

名である。世界をイメージした生き様を優先したのである。舞台の筋道は整えるが、演じる主役は人

に譲った。


▼龍馬は、明治維新を前に刺客によって33歳の若さで絶命する。「日本を今一度、せんたくいたし申

し候」。龍馬が姉へ送った手紙の一部である。枠にとらわれない自由な発想で世界を見据え、日本を

生まれ変わらせようと奔走した。閉塞感のある今日の社会に、求められる理想の人物像ではなかろう

か。(茨城・MK)


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