2013/09/13
埼玉も世界遺産の実現を(埼玉・HS)
埼玉も世界遺産の実現を
▼富士山が世界文化遺産に登録される直前の6月。富士スバルラインを5合目まで自動車で登り、麓
の忍野八海も観光した。折りしも、あいにくの雨模様。標高2305mからのパノラマはお目にかか
れなかったが、駐車場には中国人観光客を乗せた大型バスが何台も停まっていた。
▼忍野八海は富士山に降った雨が地中に染込み、湧水となって地上に現れたもの。しかし、周囲は観
光客用の店や施設などが立ち並んで完全に観光地化され、自然環境を満喫できる環境とは言えない状
態。特に人口的に掘削された「中池」は忍野八海の中心に位置しているが、忍野八海とは関係のない
存在。
▼世界遺産に登録されると、周辺地域の観光産業に多大な影響がある。安易な観光地化は、保全の妨
げが懸念される。世界遺産は保全が目的であり、観光開発を促進する趣旨ではなく、世界遺産登録に
よって観光上の開発が制限されている地域もある。島根県の石見銀山では、登録当初、観光客向けに
運行されていたバス路線が廃止されている。
▼埼玉県内にも規模は小さいが、未来に残したい遺産はある。記者の取材エリアには、熊谷市の国
宝・妻沼聖天山勧喜院聖天堂、深谷市の重要文化財・旧煉瓦製造施設、行田市では9基の古墳からな
る埼玉古墳群、本庄市には国学者・塙保己一旧宅などがあり、それぞれ、観光・保全の両面から対策
が進んでいる。
▼何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」。自治体の税収増や地域の活性化のため、観光地化は必要だ
が弊害も伴う。地元関係者が知恵を絞り、観光と保全のベストバランスを見つけ、埼玉の世界遺産を
実現して欲しいものだ。(埼玉・HS)