2013/10/10
専門紙のスタンス(埼玉・YW)
専門紙のスタンス
▼日本新聞協会は2013年度新聞協会長賞に朝日新聞の一大スクープ「手抜き除染」と決めた。同
社は前年度の長期連載「プロメテウスの罠」に続き2年連続受賞となった。
▼現地に張り込んで実態を取材、除染の様子を写真撮影した記事は、世間に怒りを覚えさせた。「だ
から公共事業は信用できない、発注者も知っていただろうし黙認したのでは…」、さらには「他のマ
スコミも感じていたのに何故報道しようとしないのか」「他社の感覚の鈍さ、もしくは黙認という罪
ではないか」と思わせる内容だった。
▼朝日新聞はおそらくこの賞に季節の花の香りを添え、自らも酔いしれる香りを馥郁<ふくいく>して
いることであろう。建設専門紙としても一般紙同様に必要な取材は、純粋に問題意識を持って疑問点
を追求する姿勢であることに変わりはないはず。至極単純明快である。「専門紙はそこまでする必要
はない」などと勝手に判断することやタブーなことと勝手に決めつけることは慎まなくてはいけない
と思う。報道の基本である。
▼特に専門紙にとって厄介なのは、タブーと判断して書かないことは、黙認に該当する。分からなく
て、あるいは情報収集不足で他紙に抜かれることより、知っていて書かないことは、事と場合によっ
ては罪であり、専門紙としての立場を捨てることを意味することになりはしないか。
▼専門新聞は「専門分野のニーズに対応」と頻繁に使用するが、専門的視点を欠けるとその表現すら
返って「ぼろをまとう」ものに見られ兼ねない。ジャーナリズムの原点に立ち、視点を変え深く追求
する姿勢を自らもちたいと自戒する日々である。(埼玉・YW)