コラム

2014/04/26

今できる最大限のものを(新潟・HT)

今できる最大限のものを


▼昨年、自宅をリフォームした際に「絶対に手を加えない方がいい」と和室の改修を大工に断られた。

大工の言い分は「同じものを建てることはなかなかできない」と寝ぼけたことをいう。同じものをつ

くろうと思っても、木材が手に入らないうえ、職人が見つからないというのだ


▼築40年を超える我が家の和室。大工が改修を断ったものの素人目には、ただの日本家屋にしか見え

ない。「昔は、こんな家ばっかりだったのだが、今の時代に建てるのは贅沢なことだ」と大工は続け

た。昔はできたことが、今では貴重なものになってしまったらしい


▼東京の著名な建築家が設計した新潟県内のある公共施設で、建築本体工事を担当した監督員から

「これほどの施工は、二度とできない」という話を伺った。内装、外装ともコンクリート打ちっ放し

で施工されたその施設は、途中、東日本大震災による資材、人材の不足もあり、当初の計画から2カ

月遅れの完成となった


▼曲線の付いた外装、多面的な内装と、コンクリート打ちっ放しにしては明らかに厄介な形をしてい

る。現状では、型枠大工の確保が難しいことから施工者と監督員は、より工期の短い工法を提案した

が、設計者が手間のかかる工法を譲らなかったらしい。監督員は「もう二度と担当したくない」とい

い放ったものの、「世界一の施工だったよ」と自慢した


▼今できることも、この先、同じことができるとは限らない。だからこそ今できる最大限のものをつ

くれ、と設計者は言いたかったのではなかろうか。良いものをつくりたければ、手間と経費を惜しん

ではいけない。どんな商品にも言えることだ。(新潟・HT)


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