2014/05/24
美しい桜花とヤドリギ(群馬・MY)
美しい桜花とヤドリギ
▼日本列島に春の訪れを告げ、鮮やかに去っていった桜の花。ことし、その美しい花々を見に行った
ときにおかしな光景を見た。まるで雲のように頭上を覆う薄ピンクに一点、青々とした緑色の玉が着
いている。同行した友人に尋ねると「あれはヤドリギだよ」と教えられた
▼世界中に分布する寄生植物で、エノキやクリなどの枝によく見られるらしい。晩秋にかけ宿主の木
の葉が落ちると、40〜60?の球状に葉をはやした姿を現す。冬季に実を付け、それを鳥が食べると種
子が次の木に運ばれる。そういえば、実家の近くにはいくつも緑色の玉を抱えた木があったが、あれ
はヤドリギの実を食べた鳥たちの寝ぐらだったのだろうか
▼可憐に咲き誇る桜並木のなかに丸々と太ったように見えるヤドリギが座っているようすは、なんと
も残念に感じた。寄生という言葉が悪くさせているのかもしれない。せっかく一面の桜色なのになぜ
管理者は除去しないのか。撮影し終えた写真を確認する友人にそう告げると、帰りの車中で意外なこ
とを教えられた
▼実はこのヤドリギ、欧米では聖なる植物として、ヒイラギと並んでクリスマスの飾りとして使われ
る。冬でも緑色の葉を保ち白い実を結ぶヤドリギは、枯れ木に生き生きとした生命を与え、数々の伝
説や神話が残っているらしい。若いカップルがヤドリギの下でキスを交わすと祝福されるといった伝
承も有名だとか
▼寄生植物からこんなロマンチックな話が聞けるとは。無粋な自分を後悔し、翌週に再び桜並木を訪
れると、すでに一帯は葉桜と化していた。来年は誰とここへ来ようか。1年間ゆっくりと思案しよう。
(群馬・MY)