コラム

2014/06/21

近代化の象徴富岡製糸場(新潟・YY)

近代化の象徴富岡製糸場


▼「富岡製糸場と絹産業遺産群」がユネスコ世界遺産委員会の諮問機関ICOMOSによる勧告を受

け、今月の世界遺産委員会において、世界遺産一覧表への記載の可否が決定される予定だ。現地には

大勢の観光客が詰め掛けているとのニュースを見るに付け、隣県を訪れた際にでも見学しておけばよ

かったとの思いに駆られている


▼先日、興味を覚え、とある民俗産業史料館を覗いてみた。建物は国の登録有形文化財に登録された

立派なもの。入館料が無料とのことで、展示物は旧家の蔵に収まっていたような日用品が主流なので

はと予想しつつも、文化財の建物内部を見ることができることへの期待は大きかった


▼見学後の正直な感想は「がっかり」だった。貴重な展示品も多かったが、建物は窓の並ぶ壁面が展

示パネルで覆われ、様子を伺い知ることはできず、展示室も回廊もシートやじゅうたんで隠されてお

り、書院づくりの床の間は展示ケースが置かれ、棚の前にはテレビが据えられている


▼資料館であり、主役が展示物であることは理解できる。床の覆いも文化財を守るためかもしれない。

しかし、貴重な建物の雰囲気を感じ取れたのが天井の造りだけだったことは、とても残念だった


▼富岡製糸場は明治政府が日本の近代化のために、最初に設置した器械生糸場で、まさに近代化のシ

ンボルであった。建造物はほぼ当時の状態で保存されている。工女を育てることが目的だったが、真

の狙いは若い女性に、日本の「未来の産業」を託したことだった。この遺産には、ハード面だけでな

く、ソフト面でも近代日本の歴史と歩みが詰められている。(新潟・YY)


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