コラム

2014/08/19

愛情が技術を育てる(東京・HM)

愛情が技術を育てる


▼日本酒は複雑な工程で造られる。原料である米の中に、直接アルコールに変わる物質がないため、

こうじ菌により、まず米の中のデンプンを糖分に変える。この糖分を、酵母がアルコールに変えるこ

とで酒になる


▼こう書くと簡単そうに感じられるかもしれないが、1つ1つの作業には大変な手間と時間がかかる。

きちんと酒になることはもちろん、どのような味わいの酒を目指すのか、そしていかに目指した味に

近づけるのか。それは、酒造りの総責任者である杜氏(とうじ)の腕による


▼先日、テレビを見ていたら伊達政宗が家来にあてた書簡が紹介されていた。酒好きで有名な政宗は、

いい酒をつくるために、外部から杜氏を呼びたいと言っている。さらに、その杜氏の技術を継承する

ために、3人の手下をつけて学ばせたらどうかと細かく書いている。酒好きならではの書簡だ。興味

を持って少し調べてみると、政宗は実際に大和(奈良)から職人を招き、城内に酒蔵と居室を与え、

技術を磨かせたそうだ


▼このエピソードを知り、技術が育つ背景には、「愛されること」が重要だと改めて感じた。これが

好きだ、必要だ、欲しい、と思われること。ニーズと言い換えてもいい。それがあって初めて、応え

ようとする努力が生まれ、技術につながっていく。いい代えれば愛情が技術を育てるのだ


▼東北の酒を飲む。多くの酒は「すっきりとキレがいい」と評価される。ただし水っぽい訳ではなく

米の味はかえってしっかりする。甘味や酸味が強い個性的な酒もある。政宗が育てたいと思った酒の

技術は見事に花開き、その酒は今も愛され続けている。(東京・HM)


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