コラム

2014/09/24

赤谷の森に望むこと(群馬・UT)

赤谷の森に望むこと


▼新潟県境に近い群馬県みなかみ町北部に、赤谷の森と呼ばれる約1万haの国有林がある。そこでは生物多様性の復元などを目的とした「赤谷プロジェクト」と呼ばれる団体が活動している


▼プロジェクトは、地域の協議会と林野庁関東森林管理局、日本自然保護協会の3者が協力して結成した。現在は、人工林の伐採によるイヌワシの狩り場確保を計画しており、来年度から試験的な伐採に着手する。人工林は十分に成熟したものの、伐採されなず狩り場が減ったことがイヌワシの繁殖成功率の低下要因の1つであると考えられており、1990年ごろから全国的にイヌワシの繁殖率も減少傾向が続いているために、歯止めをかけたい考えだ


▼素人は、人間が手をつけない自然の状態を保つことがイヌワシの絶滅を防ぐと、真っ先に考えるが、人工林は自然な状態でなく翼を広げると幅が2mにもなるイヌワシにとっては人工林は狭すぎて十分に狩りができない。人間が手を加えなければ絶滅の危険性がさらに高まるというのに驚かされた。1950年代から赤谷の森に人工林が増え始めたらしい。ここ60年で環境が激変したということであろうか


▼赤谷プロジェクト全体でみると、人工林3000haを自然林に戻すことを一つの目標としており、完遂までには100年単位で活動を続けて行く必要があると聞く。なんとも気が遠くなる話しだが、自然界にして見ればごく当たり前のことで、むしろここ数十年で起きた変化が急激すぎたのだろう。イヌワシが再び多くの山で空を舞うことができるよう、赤谷の森がそのスタート地点となることを願いたい。(群馬・UT)


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