コラム

2014/12/04

空間建築における感情体験(茨城・HN)

空間建築における感情体験


▼東京都港区の鹿島KIビルで、第26回高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門)を受賞した米国の建築家、スティーヴン・ホールさんによる受賞記念建築講演会が、日本美術協会の主催で開かれた。「音楽の建築学」と題した講演で、ホールさんは「音楽は人に強い感情を呼び起こす。空間建築の体験も同様だ」と指摘した。感情体験こそが建築において大切だと語ったそうだ


▼講演会を聞いた、ある建築事務所の代表は「著名な方の話しを聞いて、インスピレーションが沸いた。次の作品に活かしたい」と興奮ぎみに語った。恥ずかしながら、ホールさんの偉大さをよく知らなかったが、後日、美術関係者から頂いた資料で存在の大きさを知った


▼茨城県内では、東日本大震災による被災などをきっかけに市町村の庁舎建替計画が各地で進められている。妹島(せじま)和世氏と西沢立衛氏による建築ユニット、㈲SANAA事務所(東京都小平市)が設計を手がけた日立市の新庁舎は、執務棟の前面に大屋根が拡がるなど、設計意欲の溢れるパースに仕上がっていた


▼しかし、資材高騰や人手不足といった経済状況から入札が不調に。市民オンブズマンなどから厳しい指摘を受け、壁材や設備機器、構造などを大幅に見直した。空間建築の特徴ある大屋根も面積や形状、材質などで変更を余儀なくされた


▼「企画提案の内容が、そのまま行く事なんてまずないよ」とある建築事務所の代表。とはいえ、空間建築の手直しをされた妹島氏らの心境は穏やかではないはず。その中にあっても、施工者を泣かす難解な設計は遠慮したいが、高い志だけは持ってほしい。(茨城・HN)


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