コラム

2015/01/22

「民、信無くば立たず」(茨城・HS)

「民、信無くば立たず」


▼食品への異物混入事件が相次いでいる。あまりにも多いので半ば日常化している感もある。「ああ、またか」とニュースを他人事のように聞き流した次の瞬間、感覚がまひしてしまっている自分に気付き、ゾッとする


▼チキンナゲットやフライドポテト、ガム、カップ焼きそば……どれも多くの人に愛されている食べ物だ。自主回収して販売を自粛している企業、再発に気を付けながら販売を続けている企業、それぞれに事情はあるだろうが、人の体の中に入るものなので、二度と起こらないよう細心の注意を払ってほしいものだ


▼もしこれが建設業界だったらどうだろうか。コンクリートに異物を混入して強度が低下したとしたら、工事のやり直しが必要になるのではないだろうか。中身が違いすぎると言われればそれまでだが、事件に飢えるマスコミの格好のネタにされるだろう。広告費という大人の事情も絡み、食品業界への非難が忘れ去られるくらいのバッシングを受けることになるのは間違いない


▼この流れを受けて厚労省は、各自治体に業者へ混入防止の指導を徹底するよう通知した。ある大学の教授は「表ざたにならないだけで、珍しいことではない」と指摘する。あまり過敏になりすぎるのも確かに大人げないが、だからといって放置して良いはずがない


▼食品業界に限らず、一度失った信頼を取り戻すのは非常に難しい。普段の生活にかかわるものならばなおさらだ。政治の要諦(ようてい)に応えた孔子の「民、信無くば立たず」という言葉は、政治の世界だけでなく、どの商売にも当てはまる。新年を迎え、まずは自分自身にこの言葉を言い聞かせたい。(茨城・HS)


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