コラム

2015/02/24

行き過ぎた報道は危険(茨城・KS)

行き過ぎた報道は危険


▼戦場カメラマン、渡部陽一さんの「取材の掟」がとても分かりやすいと評判だ。「護衛がいても危ない所には近づかない」「紛争国の中には国境地域から一歩も入らない」「捕まった時点でジャーナリスト失格」など―。自称イスラム国による痛ましい人質事件が起きた今、改めて知らしめたい教訓だ


▼あるラジオ番組で戦場報道について、「危機管理が8割で、写真技術が2割。写真を撮るよりも自分の国に戻ることが大切」と強調。そして「どんな仕事でもルールに従って進め、危機管理を最優先し、引く勇気を持って欲張らないこと」と伝えていた。何度も生死のはざまをくぐり抜けて培ったリスクアセスメント能力とプロ意識には脱帽である


▼しかしこの期におよんで、日本のフリーカメラマンが自称イスラム国のはびこるシリアへ渡航しようとし、外務省がこれを差し止めた。さらにまた、21歳の日本人大学生が自称イスラム国の関係者とツイッターで連絡を取り合い、「現地の状況を伝えたい」とシリアへの入国を計画しているという


▼1月には、フランスの週刊紙がイスラム系過激派テロリストの襲撃を受けたばかりだが、同紙が掲載してきたイスラム教創始者ムハンマドの風刺画は侮辱にしか見えない。同紙は〝表現の自由〟を主張しているが、それによって同じく尊い〝信教の自由〟を抑圧してよいわけがない。愛情のない風刺画に意味はあるのか


▼ジャーナリストとして、スクープで他者を出し抜きたい、名声を得たいといった情熱は大事だが、たくさんの国民や世界の人々の心を苦しめるあのような悲劇は、絶対に繰り返してはならない。(茨城・KS)


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