コラム

2015/03/04

老朽インフラの解体(長野・JI)

老朽インフラの解体


▼通勤で毎日利用していた橋が、老朽化による架け替えのため封鎖され、解体された。仮設橋は歩行者・自転車用のみ。仕方なくルートを変更して会社に向かっている。不便ではあるが、今から新設橋が楽しみである


▼インフラの老朽化は社会的問題だ。傷んだ道路などは補修しなければ、国民生活の安全・安心が保持されない。自治体も財政事情を考慮しつつ中長期的な修繕計画を策定し、事業を進めている。ところが、このインフラ更新に疑問を呈する意見を目にした


▼旧建設省出身で元岩手県知事、元総務大臣の増田寛也氏は、著書『地方消滅』(中公新書)において、多くの国民が「少子高齢化」に目を奪われ、人口減少に対して危機感がないことを指摘する。さらに、すべての市区町村が人口を減らす中で、老朽化したインフラの更新について「財政的に可能なのか、人口動態を考えた場合必要なのか、検証する必要がある」と述べる。言い方を変えれば、あまり使われていない古い橋は取り壊せ、ということだろうか


▼増田氏は人口減少対策として「すべての地域にエネルギーをつぎ込むのではなく、地方中核都市に資源を集中」するよう提案する。ただし公共事業として新たに施設を整備するのではなく、若者の雇用の場を開拓すること、人材への投資を重要視している


▼近所で解体された橋は、国道と中心市街地をつなぐ、交通量の多い路線だった。架け替えは必要だろう。しかし老朽化した橋のすべてが同じ価値ではない。解体か更新か。人口減少で「消滅プロセスに入りつつある」(増田氏)地方は今後、難しい選択を迫られるだろう。(長野・JI)


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