コラム

2015/03/05

矛先はそこでよいのか(水戸・EM)

矛先はそこでよいのか


▼「設計成果が使いものにならなかった。本当に現地を確認したのか」「特記仕様書には協議中とあったが実際は行われておらず、受注後に自ら関係機関や住民との折衝に奔走した」「設計変更の手続きにあまりにも時間がかかる。また、納得できる理由もなく却下されてしまう」。以前小欄で紹介した業界と行政の意見交換の一場面


▼業界側はこうした実例を示した上で、行政の慢性的な人員不足を懸念した。「職員は多くの現場を掛け持ち、さぞ大変だと思う。多忙を極める中、結果としてほころびが出たり、施工者任せになってしまうのではないか」


▼内閣人事局による2015年度機構・定員の審査結果。国土交通省の減員数は1259人で、農林水産省(1372人)、財務省(1316人)に次ぐ規模となった。昨今の国際情勢を踏まえ、戦略的な海上保安体制の構築に増員が図られている一方、旧建設省、とりわけ出先機関の絶対的人員不足の解消には程遠い結果であった


▼国土交通労働組合関東建設支部の調べによると、13年度に1カ月当たりの超過勤務が、健康障害のリスクが極めて高くなるとされる80時間を超えた延べ人数は1138人。ある出先機関では1人の建設監督官が60本もの仕事を受け持つケースもあったという。先の業界の声は、いやみではない


▼個人の疲弊が組織の弱体化、ひいては行政サービスの低下につながる。安全・安心、防災・減災。公共事業を着実かつ円滑に進めることは今、行政に求められているニーズ。人員削減の矛先はそこでよいのか。本年度補正予算が成立し、「早期執行」と鞭打たれる職員。声なき声が聞こえる。(茨城・EM)


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