コラム

2015/03/14

行政連携して霞堤の活用を(新潟・SS)

行政連携して霞堤の活用を


▼新潟では今年一番の寒波が到来し、大雪で山間部の多くの道路が規制された。昨年は記録的な大雪に見舞われた山梨県甲府市に対し、災害協定に基づき、上越市は除雪機械やオペレーターなどを派遣し除雪作業を行った


▼戦国時代、駿河の今川氏真と相模の北条氏康から経済封鎖(塩留め)された甲斐の武田信玄に対し、敵対関係にある越後の上杉謙信が塩を送って助けたという逸話から「平成版の敵に塩を送る」ことが話題になった


▼一昨年、台風18号によって上越・妙高を流れる矢代川の堤防が、約30mにわたって決壊し、田に濁流が流れ込み近隣住民400人近くが一時避難した。矢代川は決壊したが「霞堤」のおかげで、地元の住民や近隣の住宅地は浸水被害を受けなかったという。霞堤とは堤防のある区間を開削して、堤防を連続につなげずに、開削から流れ出る水を田や遊水地に一旦流し込み、決壊を防ぐ築堤をいう


▼堤防だけで洪水を防ぐ西洋式築堤でなく、洪水という自然水害を受け入れ、田などを活用して、洪水が終わると河川に水を戻す東洋式築堤である。武田信玄が考案したことで知られ、山梨県内には歴史の風雪に耐えて今も残っている。塩といい霞堤といい、越後と甲斐の意外な関連性には驚く。除雪応援は霞堤への恩義とも受け取れなくもない


▼矢代川が流れ込む関川整備計画によると、現存の霞堤は残す方針だ。しかし水が流れ込む土地は農地が基本で、家屋などの保全対象が1件でも建つと霞堤を残すことはできない。霞堤を残すには河川行政のほかに都市や農地行政が連携して土地利用を規制する必要があるのではないか。(新潟・SS)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら