コラム

2015/04/24

気付かされる知ったかぶり(山梨・TT)

気付かされる知ったかぶり


▼かけ出し記者のころ、「こんなことも知らないの?」と相手に、あ然とさせられるのが怖く、知らないのに知ったかぶりして、取材を終えたことがあった。会社に戻って、いざ記事を書く時に、理解不足から筆が進まず、結局は取材をし直すなどの失敗を何度繰り返したことか


▼そんなある日、あるジャーナリストが「記者は分からないと言える能力が必要だ」と書かれた記事を読んだ。知ったつもりのまま、取材を進もうとしていた自分を反省し、その後は「勉強不足で申し訳ありませんが、詳しく教えていただけませんか」と言うことにした


▼素直に「分かりません」を伝えることで、丁寧な説明を聞くことができる。また、そこから新たな疑問が生まれ、疑問を質問することで、さらに理解を深めることもできた。同時に良好な人間関係を築けたという結果につながったこともあった


▼4月に新入社員を迎え入れた企業では、数カ月も経てば業務に少しずつ慣れてきた社員から積極的に疑問・質問が出されるようになるだろう。普段当たり前のように使っている専門用語を、改めて質問されたら説明できるだろうか? こんな時に、「知っている」と思っていたことが「知っているつもりだった」ということに気づかされよう


▼古代ギリシャの哲学者ソクラテスに、人間の無知を悟らせた「無知の知」という言葉がある。「自らの無知を自覚することが真の認識に至る道であるとする」真理探究への基本になる考え方だ。心理探求とまで行かなくとも、凡才としてはまず自分の勉強不足を認め、もっと知識を広め、取材を深めていくことの大切を知らされた。(山梨・TT)


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