コラム

2015/08/05

「施設に込められた思い」(群馬・UT)

施設に込められた思い


▼群馬県の本庁舎に隣接した昭和庁舎。そのレトロな風貌から多くのドラマや映画の撮影地に使用され、多くのファンが集う観光スポットになっている。現在の本庁が高層ビルということもあり、その対比にひときわ目が引かれる。1928年(昭和3年)に建設され、建築物としての価値もあり、現在も愛され続けている施設である


▼一方で、老朽化した公共施設の維持管理や更新が大きな問題となっている。バブル期に建設された多くの建物で老朽化が進み、施設の維持や廃止などの基準を定める総合管理計画が多くの市町村で策定されている。維持するかの判断は、施設の使用頻度や管理費など、客観的な視点を中心に行われ、建築物の価値や地域の思いなどの主観的な視点は反映されにくい


▼ある市では、老朽化などから公共施設と隣接する一帯の再整備が検討されている。検討会や協議会が開かれており、その中でとある施設が議題に挙がった。その施設は、耐震化も満たしていない図書館だが、著名なコンサル業者が設計を担当し、建築物としての価値があるのではという報告があった


▼現状は老朽化したただの図書館であるが、維持修繕し続けることで建築物としての価値を高め、さらに歴史的な価値も加えられるのではないかとの思いに駆られた


▼公共施設であるがゆえに、主観的な視点でのみ施設の今後を決めることはできない。だが、効率化という客観的な視点だけで建築物の価値が決められてしまうのは、あまりにももったいない。建設時に込められた思いと、その意義を見直し、後世に誇れる施設を少しでも次代に継承していってほしい(群馬・UT)


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