コラム

2015/09/12

建物にも熟成や風格を(新潟・SS)

建物にも熟成や風格を


▼とんかつはロース派だったが、近頃は脂っぽいと胃がもたれるのであっさりしたヒレが好みになりつつある。日本では脂肪分(サシ)がたっぷり入った霜降り肉が最高と評価される牛肉ではアメリカから相次いで上陸したステーキハウスの影響で、赤身の熟成肉(エイジングビーフ)がブームとなっている


▼「エイジング」という言葉を直訳すると、老化や劣化となる。建設業界でのエイジングとは、建築大辞典第2版(彰国社)によると、「年月の経過に伴い建物の景観的な質が向上する働き」という意味がある。時間の経過とともに、新築時には無い新たな価値が生じること


▼欧米に比べ長持ちしない日本の住宅の平均寿命はわずか20数年。英国では75年ともいわれ、築100年以上の住宅が、新築よりも高い価格で売買される場合もあるという。日本でも、長期優良住宅が制度化され、長期の使用を前提にした設計を行うことが常識化され建物の寿命は徐々に延びていく


▼建物の寿命が延びることで重要なポイントとなるのは外壁などの表面の部分。外壁は太陽の熱や雨風にさらされて傷んだり汚れたりしていくことは避けられない。もちろんリフォームといったアンチエイジングもひとつの手段だが、外壁などの傷や汚れが、味わいに変わるような素材選定やデザインが重要になってくる


▼素材選びやデザイン以外にも、メンテナンス手法などを工夫し、今の建物を長く美しく残すために、建物が数十年後に熟成されて風格が備わり、新築時には無い、新たな価値や持ち味が得られるようなエイジングの考え方を積極的に取り入れる必要があるのだろう。(新潟・SS)


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