コラム

2016/03/18

DHMOの恐怖(群馬・YT)

DHMOの恐怖


▼DHMOという物質を知っているだろうか。正しくはジハイドロジェンモノオキサイドと呼ばれ、酸性雨などの環境汚染物質に含まれているほか、車のブレーキを効きにくくする。誤って吸引することにより、毎年多くの死者が出ているなど、さまざまな被害が報告されている。インターネット上では、危険性を呼び掛けるサイトも存在している


▼この物質を日本語訳すると一酸化二水素、つまりはただの水である。昔からあるジョークの一つで、物事の一面のみを捉えれば、水のような安全な物質でも、伝え方によっては危険なものに見せかけることができる。情報の多面性を示す良い例だ


▼アメリカの中学生が「人はどのようにだまされるのか」という調査で使ったことがきっかけで世界中に広がり、いくつかの国ではこのジョークを真に受けた騒動も起きたようだ。知らない言葉を調べるという、ごく単純な作業でだまされるのを防げる点も皮肉が効いている


▼思い起こせば、東日本大震災では、情報の多面性に日本中が右往左往する事態となった。被害の少なかった地域での日用品の買い占めや震災後の風評被害など、情報の一面のみが注目され、各地で混乱をもたらした。健康に関わることに加え、情報が限られてしまったことが原因の一つだろう


▼今月11日で震災から5年が経過した。震災による被害は各地に残っており、これからどんな影響をもたらすのかまだ分からない部分もある。しかし、被災地の情報が多く伝えられている今なら、DHMOのような風評被害による実態のない恐怖に踊らされることはないはずだ(群馬・YT)


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