コラム

2018/12/01

変わっていく言葉(群馬・YT)

変わっていく言葉


▼文化庁が毎年行っている国語に関する世論調査の2017年度版の結果が公表された。その中で特に目を引いたのは「なし崩し」の意味を問うもの。辞書などで正しいとされているのは「借金などを少しずつ返していくこと」だが、6割以上が「無かったことにすること」を選択し、本来の意味を選んだのは2割以下と、懸け離れていることが示された


▼年代ごとの回答を見ても全ての世代でなかったことにすることの意味で捉えている人が多い。つまり「若いから言葉の意味を知らない。年配の人にはなじみがない言葉だから」というような世代間の問題ではないということだ。さらに時代が進めば、辞書にも「なかったことにすること」という意味が加わるかもしれない


▼言葉は生き物とも言うように、時代によって変わっていくのが当たり前のこと。言葉の乱れが嘆かわしいという人もいるだろうが、古文でいうところの「もののあはれ」を現代で使う人がいないのと同じ。本当に気を付けなくてはいけないのは、言葉の持つ意味を忘れてしまい語彙が少なくなってしまうことだ


▼三省堂が10月に発売した高校生向けの辞書『現代新国語辞典・第六版』に普通の辞書にはない新語やネットスラングなどが入っていることが話題となった。10年を待たずに消えてしまうかもしれないが、現代に息づいた言葉であり、時代が進めばそうした言葉が生きていたことの証明となる


▼変化をただ嫌うのではなく、なぜ変わったのかを考えなくてはならないのは言葉だけでなく多くの事柄で共通している。否定する前に一呼吸おいて変化を楽しむ余裕が必要だ。(群馬・YT)


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