コラム

2018/12/08

時を超える日本橋(東京・KK)

時を超える日本橋


▼今から400年以上前の江戸時代に全国へ通じる五街道の起点に定められた東京の日本橋。現在は青銅製の獅子と麒麟(きりん)の彫刻を持つ石造アーチ橋として国の重要文化財に指定され、国内外から多くの観光客が訪れる日本を代表する橋となっている。その日本橋では上空を通過する首都高速道路を地下に移設する計画が進んでおり、近い将来、日本橋に空が戻ることになる


▼江戸時代の日本橋周辺は魚河岸や問屋が立ち並び、現在の日本銀行本店の地に江戸幕府が金貨を鋳造した金座が置かれるなど経済の中心的役割を担っていた。その様子は錦絵などに描かれ、当時の繁栄ぶりをうかがい知ることができる


▼浮世絵師・葛飾北斎の1831年ごろの作品『冨嶽三十六景江戸日本橋』は日本橋に近い視点から橋の欄干のみを描いた珍しい構図で有名。富士山と江戸城、活気あふれる日本橋が遠近法で絶妙に描かれており非常に興味深い。北斎も100年以上経って日本橋の上に橋が架かるとは想像していなかったのではないか


▼北斎は錦絵で全国各地の橋を描いた。代表作『諸国名橋奇覧』では橋の多様な構造に着目して11本の橋を描き分けた。また『百橋一覧』は実在の橋ではなく、夢で見た空想上の100本の橋を1枚の中に描いた異色作だ


▼橋の構造や種類は、それぞれの時代における技術力が反映され、当時の人々の思いが詰まっている。木造橋から鋼橋、PC橋など新しい技術は導入されても、利便性向上のために川や谷を渡る交通手段としての役割は変わらない。やがてなくなる日本橋上空の首都高だが、幻の橋として後世に語り継がれることだろう。(東京・KK)


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