コラム

2018/12/11

「漫画でわかる……」(茨城・RN)

「漫画でわかる……」


▼「漫画でわかる〇〇」というような、ある事柄について漫画形式で解説する本を書店で見かけない日はない。読者にとっては敷居が低く、手に取りやすい本だが、こういった作品を作り出す作者の苦悩は計り知れない


▼かつて、漫画は夢や希望を読者に見せる存在、という側面が強かった。しかし、漫画で描けるもののレベルが徐々に高くなり、あらゆるテーマを漫画で表現することができるようになったのだと思う。日本の漫画文化の成熟が感じられる


▼『きのう何食べた?』という漫画がある。弁護士と美容師の同棲しているゲイのカップルがそれぞれ仕事をして、帰宅したらどちらかが料理をして二人で食べる、という日常を描いた作品だ。作中で出てくるのは節約や健康に気を使った家庭料理なので、読者が献立の参考にすることもできる


▼特筆すべきは、この漫画が「老い」を描写していることだ。登場人物たちが年齢を重ねていき、生活や仕事が緩やかに変化していく。物語開始時は40代だった主人公が50歳を迎える描写があったり、知人の孫が小学生になったのでランドセルを買わないと……という話題が出たり。深刻になりすぎない雰囲気の中で、熟年離婚や親の入院といった日常で起こる事件が描かれることも


▼どんなことが起きても、家に帰ったら、ご飯を作って、食べる。この漫画を読んでいると「老い」とは克服するのでも恐れるのでもなく、迎えるものなのだ、ということが分かる。作中に出てくる料理のレシピを参考にしつつ、彼らの人生をこのまま見届けたいという気持ちで、きょうもこの漫画を読み返している。(茨城・RN)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら