コラム

2019/03/06

変わる文化財とのかかわり(群馬・YY)

変わる文化財との関わり


▼4月1日から改正文化財保護法が施行される。同法は1949年に法隆寺金堂壁画が火災で焼損したことを機に制定、長らく文化財保存の根幹を成す法律だった。今回の改正は、地域における文化財の計画的な保存・活用促進のほか、地方文化財保護行政強化が狙い


▼先日、群馬県館林市にある旧上毛モスリン事務所を訪ねた。同施設は繊維製品メーカー、上毛モスリンの工場事務所として1909年に建築。工場縮小の際、市の所有となり、現在は資料館として使用されている。一時は取り壊しの話も出たが、地域の要望で保存された経緯がある


▼このような歴史的建造物の保存活用には多くの課題がある。同じ市内に残る旧二業見番(にぎょうけんばん)組合事務所は、かつて料亭や芸妓(げいぎ)置屋の組合が入っていた。華やかな花街の雰囲気を今に伝える建物だが、耐震性の問題から使用を停止したままだ。立派な唐破風造の玄関と切妻屋根、どうにか活用できないものか


▼改正文化財保護法は行政や所有者だけではなく、地域社会全体で保存に取り組むことを主眼に置いている。保存活用に向けた計画策定にも住民が積極的に関与するのが望ましい姿と言える。しかし文化財を高尚で遠い存在と捉える向きも多い


▼旧上毛モスリン事務所で職員の方から話を伺っている最中、アニメキャラクターのコスチュームを着た若者の姿を見かけた。貴重な木造洋風建築であることから、撮影スポットになっているという。また旧二業見番組合事務所は落語を題材にしたドラマのロケで使われ、注目を集めている。アプローチはさまざま、わが街の文化財へ目を向けてみたらどうだろうか。(群馬・YY)


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