コラム

2019/05/08

一目見たいもの(新潟・KW)

一目見たいもの


▼「百聞は一見にしかず」ということわざがある。意味はご承知の通り。新作映画がいかに面白いのか力説されるより自分の目で見た方が確かだし、女性を紹介される際にも仲人から「すごくかわいいよ」と聞くより写真でいいので一度見てみたい。見ることで得られる情報の量や正確性は疑う余地がなく、とても説得力のあることわざだ


▼だからと言って、決して聞くことが無駄というわけではない。目に見えない、見ても分からないものはたくさんある。むしろ見えてこないものの方が重要な場合も多々ある。コンクリート構造物などは内部の状況を打音検査で判断するし、医者は聴診器で体の中の異常な音を集める。見ることでは得られなかった情報を聞くことで得ている


▼被災地の様子をテレビ放映すれば、視聴者は災害の規模を確認できる。しかし、被災者が何に困っているのかは実際に聞かなければ分からない。さまざまなデータや統計から担い手不足は喫緊の課題だと認識できるが、事実人手不足が起きている現場でどのような弊害が発生しているかまで把握は難しい。問題を解決へ導くには画面や表に現れない事柄を聞き出し、深く堀り下げる作業が必要になる。つまり取材だ


▼報道の使命は情報を正確に、早く、広く発信することだ。ましてや建設専門の弊紙における重要な使命は、入札情報や工事概要を伝えることだけはでなく、建設業者の声なき声を代弁し、行政や世論へ働き掛けることも重要だと考えている


▼日本と建設業界の明るい明日を一目見たい。そのために百回でも千回でも一万回でも取材を続けていく。一見のために百聞する。(新潟・KW)


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