コラム

2019/07/06

砂をもって砂を制す(新潟・CY)

砂をもって砂を制す


▼「砂の堤防」。こう聞いて何を思われるか。心もとない、と感じるだろうか-。新潟市西区の海岸と並行して伸びる国道402号沿いに、高さ約3m、延長628mの人工砂丘がつくられた。目的は飛砂防止対策


▼日本海の強風にさらされるこの国道を通勤で利用している。冬の荒れた日には途方もない量の砂が飛び、道路にも容赦なく砂の山ができる。しかし近年、砂の上をがたがたとラリーのように走ることがほとんどない。人工砂丘の効果だ。現地の砂を転用して盛り、天井に木製柵を施しただけだというが、砂丘の高さや柵の角度を地道に検証したたまものだろう。造成着手は2014年。全国的にも珍しい試みだ


▼もともとあった低い堤防は1年で砂に埋まり、海水浴シーズンに備えて徐砂を繰り返していた。道路の徐砂も頻繁にあった。年平均で約40回ほどの徐砂が、整備後は0回だった年もある。住民の要望もあって、昨年度は砂丘の延伸と砂丘をくぐって海へ抜ける通路が整備された。ボックスカルバートのこの通路、道路に対して斜めに構えたたたずまい。これも砂に埋もれないように、風の道を計算してのこと


▼初夏のよく晴れた日、通路をくぐってみた。間近で見る砂丘はさながら要塞(ようさい)といった風情。通路の先には海の青。砂が少し入り込んではいるものの、歩く分にはほとんど気にならない


▼長きにわたる砂とのいたちごっこに終止符を打ったのがほかでもない砂だったとは。砂をもって砂を制した格好だ。暗くひんやりしたトンネルを抜けてまぶしい浜に出る。釣りを楽しむ人、サーフボードを抱えた人が佐渡を眺めていた。(新潟・CY)


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