コラム

2020/02/01

2つのTARОから(群馬・YY)

2つのTARОから


▼先日立ち寄った公園で何気なくベンチに座ったところ、お尻に違和感が。思わず立ち上がり、ズボンを触ると所々濡れている。前日の雨で座面のくぼみに水がたまっていたらしい。ベンチを見返すと側面に刻まれた「TARO」の文字に気付いた。調べてみると岡本太郎氏の作品「座ることを拒否する椅子」だということが分かった


▼岡本太郎作品といえば、まず1970年に開催された大阪万博の太陽の塔を思い浮かべる人が多いはず。75年に永久保存が決定。およそ50年にわたって万博記念公園の中央口で来園者を見守り続けている。内部は長らく非公開となっていたが、2018年に改修と耐震補強工事が完了。同年3月から一般開放されている


▼昨年、大阪を訪れた際、見学に立ち寄る機会があった。ガイドの案内に従い、薄暗い通路を進むと、鮮やかな色彩を放つ「生命の樹」が見えてくる。塔内を縦に貫くように立つオブジェは、人類の進化の過程を描いている。それを取り巻くように続く階段を上ると、塔のお腹の辺りで道が途切れる


▼塔は未来をテーマとしたパビリオンの一部分で地下と空中展示とを合わせ3層構造となっていた。科学文明を信奉する社会へ警鐘を鳴らす展示もあり、大阪万博のテーマである「人類の進歩と調和」に真っ向から挑む存在であった。しかし、ほぼ全てのパビリオンが撤去される中、塔が残ったのは興味深い


▼座り心地も悪く、まさに「座ることを拒否する」公園の椅子。設置の経緯は分からなかったが、一つ一つじっくり眺めると楽しさも覚える。多面的視点が得られる公共空間。どちらも再び訪れたい。(群馬・YY)


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