コラム

2020/04/15

式典の言葉から(群馬・YY)

式典の言葉から


▼「6年生はこの真新しい体育館で卒業式を迎えることができます」。2月上旬に某市の小学校で開かれた体育館の改修完了式典を取材した折に聞いた、校長先生の言葉が頭に残る。新型コロナウイルスの感染拡大防止で政府から小中学校や高校などを対象に休校要請が出されたのは同月末だった


▼子どもの健康を考慮しての措置だったが、突然の休校に教職員は対応に追われた。児童や生徒、とりわけ卒業生にとっては区切りの付かない修了となったに違いない。また、3月末の閉校を控えていた学校では、学びやとの別れを惜しむ暇もなかったと聞く


▼卒業式に対する各校の対応も分かれた。感染者が多い地域にある学校では式自体の中止や保護者・来賓を招かず、各教室で児童や生徒個人に卒業証書を手渡す学校もあった。また、ある高校では教員が生徒一人一人の名前を読み上げる様子をライブ配信する試みが行われた


▼今から9年前の3月、東日本大震災の影響で大学の卒業式が中止になったのを思い出した。交通機関は軒並みストップし、社会的混乱を受けての大学側の判断だった。後日郵送されてきた卒業証書を手に、テレビから伝えられる被災地の状況を眺めつつ、複雑な気持ちを抱いたことを覚えている


▼前述の小学校では卒業生と保護者のみの出席で卒業式が無事行われた。式典の日、改修工事を終え、まだ木の香りが残る体育館は、別れの悲しみだけではなく、子どもたちの将来への希望で満ちあふれていたに違いない。どのような形であっても、やはり、次なる飛躍を前に、机を並べた学友との別れをしばし惜しみたい。(群馬・YY)


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