コラム

2021/03/02

その発注、当たり前ですか(埼玉・IK)

その発注、当たり前ですか


▼公共事業の編成過程をよく知らない一般の方などは思い違いされているかもしれない。適正な事業量の確保を――。先を見据えた共通認識の下、受発注者がそれぞれの立場から同じ声を上げる光景は珍しくない。ただ、事業量はお金だけ出せば簡単に増やせる代物でもないのだ


▼「今までにないほど案件形成に骨を折った」。埼玉県が公表した一般会計2月補正予算案について、ある県幹部は率直な心情を吐露する。国の総合経済対策に迅速に応える形で県は河川・街路など公共事業を中心に400億円を超える増額補正を次の当初予算案とは別に措置した。その規模にまず目が向くのは必然とはいえ、編成に携わった側の苦労が注目される場面は至って少ない


▼仮に湯水のように予算が付いても、準備が整わなければその執行は画餅に帰す。具体的な工事発注に行き着くまでには、さまざまな過程を適正に経る必要があるからだ。発注に先立ち設計にめどを付けておくのは当然。多岐にわたる調整・協議で気を抜かず、工程も緻密に計算しなければならない


▼さらに、コロナ禍の分散勤務や出勤抑制。先日、取材で県出先事務所を訪ねた際、一部職員たちがやや疲れて見えた。従来のやり方・ノウハウが十分生かせない中で案件形成する苦労については、業界問わず多くの社会人が共感するリアルなのではないか


▼かくいう自分も偉ぶったことは言えない。先ほど指摘した県職員の表情だが、幹部の話を聞いてから「思い直した」と言い換えるのが正確。乏しい洞察力には赤面するしかないが、発注者の努力には真剣に頭が下がる。非日常が当たり前を支えている。(埼玉・IK)


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