コラム

2021/05/07

空き家は突然に(埼玉・MK)

空き家は突然に


▼気付いた時には、実家が空き家になっていた。これまで何度か空き家関連の取材をしていたのに、わが生家が当の空き家になっていようとは。灯台下暗し、というほかない。祖母が福祉施設に入所し、母が祖母の家へ転居したため、実家が無人となったのだ


▼解体・外構工事の一括見積もりウェブサービス「くらそうね」などを運営するクラッソーネが空き家所有者に意識調査を行ったところ、4割強が「何も行動していない」と回答した。無力感から放置された空き家が「負動産」となっていく。事実、意識調査に協力した49・9%が「空き家に何らかの腐朽や破損がある」と回答した


▼他方、明るいニュースもある。空き家の庭に生えていた果物を使ったスイーツを開発、販売する取り組みが好評を得ているのだ。梅、はっさく、柿、柚子などで作る「空き家スイーツ」。プロジェクトに携わる菅沼朋香さんは埼玉県鳩山町で空き家を改修し、レトロな喫茶店を営む


▼こちらは根本的解決への道筋を描けるか。人工衛星技術を用いて耕作放棄地を探す仕組みを手掛けるベンチャー企業のSaguriはドローンを活用した空き家調査に乗り出した。実態把握に苦戦する行政からすれば渡りに船といったところか


▼ドローンを飛ばすまでもなく、まずは、わが「負動産」の処分から考えなくてはいけない。まさか庭に果物もならない空き家を抱えることになろうとは。意識調査に協力した人の多くが、実はこうした突然の出来事に直面しているかもしれない。事前対策とともに、事後的な対策も求められる令和時代の空き家事情である。(埼玉・MK)

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