コラム

2021/05/27

信長の献上品一粒いかが(長野・TT)

信長の献上品一粒いかが


▼テレビで見て以来、夢にまで見た憧れの金平糖(こんぺいとー)を最近手に入れた。それは桐の箱に端正に納められ、角が艶やかで、まるで宝石のようだ。ゆっくりかみ締めると、甘酸っぱい果実感が口に広がる。小さくカットされたドライフルーツを芯に、糖蜜を繰り返しかけ作り上げる、まさに熟練の職人の技の結晶


▼よく見かけるザラメに何日も糖蜜がけを繰り返して作られている物とは一味違う、幸福のお菓子。あまりの美しさとおいしさから、この「宝石」の歴史を調べてみたところ…。日本のお菓子だと思っていたが、元はポルトガルからやって来た砂糖菓子「コンフェイト」が語源らしい


▼今で言う「スイーツ男子」という言葉が合うのだろうか。甘い物には目がなかったといわれる戦国武将の織田信長に献上され、当時は製法も秘密で、公家や高級武士しか口にすることができない貴重な品とされていた。ポルトガルから伝来した当時は、現在お目にかかる象徴的な形と違って、白い球形だったようだ


▼特徴とする角や豊富な色どりは、四季がある日本人の職人が生み出した技術だが、日本で製造できるようになるまでに200年の歳月を要し、信長の時代から江戸時代まで時計の針が回った。創業180年を誇る京都の老舗が一子相伝で、この珠玉の「宝石」を作り続けている。伝統を守りながら商品化するのが非常に難しい食材を取り入れた新しい商品を絶えず送り出すなど、さらなる技術へのチャレンジ精神も持ち合わせている


▼少し値が張るが、ぜひ一粒口に入れてみてほしい。おいしい物を食べるという行為は心を豊かにすると同時に前向きにさせる。(長野・TT)


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