コラム

2021/07/09

土木施設の魅力を通じて(群馬・KS)

土木施設の魅力を通じて


▼県出先の農業事務所で取材を行っている際、担当係長が、長野堰を語り継ぐ会という会の参与を務めていることを知った。高崎市を流れる農業用水として長い歴史を持つ長野堰用水。語り継ぐ会は、その歴史をより多くの人に知ってもらうことを目的に設立され、多くの会員が参加しているという。係長は、同用水を巡るまち歩きの案内人として、その魅力を伝える活動に取り組んでいる


▼同用水は2016年に世界かんがい施設遺産に登録された。その特徴は、全国的にも珍しい円筒分水堰や分水堰の約150m下流で見られる3つの用水路の立体交差


▼円筒分水堰は自然落差を利用して4堰に正確に受益分配されるように配慮して作られた。設置されたことにより、水を巡る争いが落ち着いたと言われている。立体交差は円筒分水堰で分かれた2つの水路が並行して流れ、その上を別の水路が通る。世にも珍しい水路の立体交差はテレビでも紹介されたことがあるという


▼係長に隠れた見どころを聞くと、水路のうち高崎市並榎町と大橋町を結ぶ数百m区間を挙げてきた。近年は直線で整備することが多いが、この区間は10カ所程度の曲線で構成されている。係長は「曲線美を感じることができるので、ぜひ見てもらいたい」と笑顔で話す


▼長野堰という世界かんがい施設遺産に登録された施設でも、世間的な知名度は残念ながら高くない。ダムなどの大きな構造物はその魅力が分かりやすいが、用水など身近な施設に関しては見落とされがち。こうした施設の魅力を再発見し伝えることは、建設業の魅力を伝えることの一助となるだろう。(群馬・KS)


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