コラム

2021/10/07

情報は鼻に入ってくる(茨城・AK)

情報は鼻に入ってくる


▼キンモクセイの香りが鼻をくすぐる。真夏のうだるような暑さも過ぎ去り、木々が赤や黄に色づき始めた。この時期になると田んぼから独特な稲の香りがしてくる。しばらくすると収穫が始まり秋の到来に気付く。匂いが秋を教えてくれている


▼炭鉱夫だった祖父は、「におい」で多くの命を救った。坑道内で作業中、現場監督をしていた祖父はいつもとは違う臭いがすることに気が付き全員を即座に退避させたという。数秒後、落盤が発生したが、けが人はゼロ。「次に何が起きるか、鼻を使え」と教えられたものだ。突然の大雨や落雷など気象の変化も臭いで察知するほどの嗅覚の持ち主だった


▼知り合いの設備屋さんとにおいの話をする機会があった。水回りを得意とする彼いわく、臭いで修繕すべき箇所がわかるという。どんな修理が必要か、どれくらいの時間を要するか、おおよその事が分かるというから驚きだ。「見えてから修理に取り掛かるのでは遅い」と話す


▼視界に入るものだけが情報だと思い込む節がある。さまざまな形で情報が存在しているのに求めに行かない。自分の怠慢さが表れているのだと思う。においの元は何か、今後どのような事態が起きるのか。千里眼ならぬ千里鼻を持つにはまだまだ時間がかかりそうだ


▼わずかなにおいの変化の先に大きな収穫物がある。大げさでなく、命を救うこともある。記者として、読者の生活を支えられるような取材ができているだろうか。見えるものだけにとらわれてはいないだろうか。機微を嗅ぎ分け、次に何が起こるのか、何をすべきなのかを的確に判断し、行動できる人間でありたい。(茨城・AK)

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