コラム

2021/11/05

見えない存在に拍手を(山梨・HI)

見えない存在に拍手を


▼ガタゴト。車が大きく揺れ、体が上下左右に動いている。道路の舗装が部分的に更新され、でこぼこが激しい。乗り心地は良くない。普段から平らで整った道を走り慣れているのだろう。裏を返せば、多くの道路が状態良く保たれている証でもある


▼それは山間部の取材に向かう道中。道は細く、山肌との距離は近い。付近には落石注意の看板に、握りこぶし一つ分はある石が道路に転がっていた。もし、この石が落下してきたら。脈々と続く大きな山を横目に不安がよぎる


▼山中を進むと、山肌には防護ネットが張り巡らされ、広範囲にわたり法枠もたびたび目に入った。安全を保障してくれる安心感。落石やがけ崩れの心配も軽減される。当たり前のように存在するが、その有り難みを再認識した


▼普段から得ている恩恵に気が付く機会は少ないかもしれない。道路の舗装しかり、山中の防災対策しかり。ついつい恩恵の大きさを見過ごしてしまう。砂防堰堤もその一つ。豪雨時には、土砂や流木を食い止め、人々の命を守る役割を果たす。災害が発生すると、注目は被災状況に集まる。当然ではあるが、もどかしい。堰堤がいかに事態の収拾に役立ったか。その事実はあまり知られない。成果が認知されにくいのだ


▼日本の面積に占める山間部の割合は7割にも及ぶと言われる。山間部では、人家や道路などを守るための防災工事が進む。少しずつ着実に、生活の安全が強化されている。災害が起こらなかったとき、その裏には恩恵が隠れている。それらの施設が世間の注目の的になることは少ないかもしれないが、その存在に拍手を送りたい。(山梨・HI)

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