東京都副知事猪瀬直樹氏インタビュー
◎21年度・キャンペーン
『建設業はいらないんですか?』
◎東京都副知事・猪瀬直樹氏インタビュー
◎建設業は今、転換点
◎向かってほしい「提案型」
1987年に『ミカドの肖像』で大宅荘一ノンフィクション賞。以後文筆活動を進めながら道路関
係四公団民営化推進委員会委員、地方分権改革推進委員会委員など幅広く活躍し、テレビやラジオの
コメンテーターとしてもおなじみ。2007年からは東京都副知事を務める猪瀬直樹氏に建設業界に
対する率直なイメージを聞いた。理路整然と建設業の役割やダーティなイメージの要因などを指摘。
しかし建設業界に対するエールも忘れてはいない。
◇
―建設業全般についての印象は。
猪瀬 戦前の土木業者は「我々は地球の彫刻家だ」という自負を持っていたし、そこにはモラルも
あった。また戦後も疲弊した国土再建を担う建設業には「力強さと必死さ」があり、国民からの期待
もあった。建設業や公共事業が必要とされていたことは間違いない。時を経て高度成長期、田中角栄
の日本列島改造論は時宜を得たものだったのだろうと思う。田中角栄の発想は悪くなかったと思うが
、次第にそれまで持っていたインフラ整備に対する『必死さ』が無くなり、費用対効果の合わない工
事などをやったりして利権体質というイメージがどうしても残ってしまった。
―業界の過去・現在・未来については。
猪瀬 日本では明治時代から鉄道網の整備は進んできたが、急峻な地形と河川による物流が主軸を
担っていたため道路網整備は遅れがちだった。70年代に入ってマイカー時代が到来、国民みんなが
車に対する渇望感があったと思う。道路整備の必要性が増し、鉄道過疎地でも車があれば自由に行き
来できるようになった。均衡ある国土の発展という言い方で、インフラ整備が進められていくわけだ
が、それが都市に溜まったお金を地方にばら撒くという就業構造を作ってしまった。高度成長時代に
はインフラ整備にばら撒く余裕があったが、バブル崩壊以降そういう余裕がなくなった。にもかかわ
らず就業構造として土建業の比率が高いままになっているので仕事が減っている。建設業における就
業人口が多すぎるのは明白で、適正人口に戻らざるを得ないということだと思う。まさに建設業は今
転換点にある。
―建設業というと暗いイメージがあるが、自身はどういうイメージを持っているのか。
猪瀬 本来必要な産業なのに、ぶら下がっているイメージがあったから、普通の産業に戻れば負の
印象は無くなると思う。適正規模で需要に見合った産業としては残り続ける。そこを踏まえれば別に
暗いものではない。電線の地中化なんかにしても、電柱を一本排除するだけで美観なんかは全く違っ
てくる。建設業者もそういった小さなことに気付くデリカシーが必要だと思う。業者側から「ここの
電柱を一本取り除くだけできれいな街並みになります」といった提案をする気持ちが大切。それがビ
ジネスにつながるかどうかは別として、提案型の営業へ向かっていくべきだ。