今なぜ女性活用?厚労省小林氏インタビュー
政府の方針である女性の活躍推進。建設業においても女性の確保・育成に向けた動きが活発化しつつあるが、なぜ今「女性」なのか。その理由をしっかり把握することが、女性の確保・育成に向けた取り組みへの第一歩といえる。厚生労働省雇用均等政策課の小林洋子課長に、国の考え方や企業のメリットなどについて、話を聞いた。
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女性の能力活用を進めることの必要性について、小林氏は「労働生産の支えとなりえる人が減っている。今後、日本としてやっていけることは、生産年齢人口の人たちをいかに労働市場に出していくか。つまり就業率を増やすこと」。
女性について言えば、出産育児期。女性の就業率を見ると、30歳代が少ない。グラフで書くと真ん中がへこむ、いわゆる「M字カーブ」になる。「このM字カーブを台形にしていくことが重要課題」。一方で「働きたいと思っている人は多い。労働市場に出たいけど出られない女性は315万人いるというデータがある。この人たちを活用していくことがポイントになる」と解説する。
次に、女性の確保・育成が企業にとってどのようなメリットがあるのか。「労働時間」を1つのキーワードに考えてみると―。
「建設業も同じだと思うが、出産時に辞めている理由の1つに労働時間がある」と問題点を挙げる。制約のある労働時間が家庭との両立のネックになっている。
ただ、労働時間の問題は女性に関してだけではない。「日本は世界的に見て長時間労働が多く、また時間当たりの生産性が低い。長時間労働の全てが悪いとは言わないが、生産性の低い長時間労働はよくない。メリハリのある仕事をすべきで、残業はコストがかかる」と指摘。
「男女ともに求職者の意向を聞くと、労働時間を気にしている。ワークライフバランスを含めて重要事項になっている。さらに今後は介護の問題も出てくる。男性でも時間制約が増えることが予想される」と見ている。制約のある労働時間の中で生産性を高めるような働き方を考える必要に迫られている。
「働き方改革を女性の活躍をきっかけに進めてもらって、男性も働きやすい職場環境にしてもらう。それがイコール、メリハリのある働き方になり、生産性を高めることになる」。つまり、女性の働きやすいさを考えることで、男性も働きやすくなる。労働時間1つを例に見ても、長時間労働を少なくなり、生産性が高まれば、企業にとっても働く側にとってもメリットが出てくる。
「労働行政的に言えば、人手不足はチャンス。会社の中で業務管理を見直すきっかけにしてほしい」と強調する。
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建設企業の中には女性活用に消極的な企業が多い。「募集しても来ない」「辞めてしまう」という声も聞く。一方で「まずは男性の若年者の確保が優先」という意見もある。しかし、女性のことを考えた職場改革は、男性も含めた担い手の確保と育成に直結するもの。募集すれば来るように、辞めてしまわないよう、各企業が真剣に考える必要がある。