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ズームアップ「総合高校の授業」カリキュラム改革に協会支部が協力

2017/03/01 長野建設新聞

 長野県中野立志館高校(田村浩啓校長)が、授業カリキュラムについて長野県建設業協会中高支部(塩川伸一支部長)と懇談会を行った。懇談会参加者は、高校側が田村校長と土木建築科教諭など4人、支部からも正副支部長など4人、また同校卒業生の建設業で働く若手技術者2人が出席した。同校は中野実業高校と中野高校を統合した総合学科高校。田村校長は専門高校に負けない人材輩出に向け、建設業界と連携した授業カリキュラム改革を見据えている。地元建設業が求める人材をいかに育成するか。そのための学校と業界との取り組みがスタートしたと言える。

 総合学科高校では、授業の多くを生徒が選択できるシステムになっている。中野立志館高校の場合、1年生は国語や数学などの必修中心だが、2・3年生は自分の進路に応じた授業を選択できる。選択科目は建設系もあり、建築構造や建築施工、測量、土木基礎力学などを学ぶことができる。この選択科目について田村校長は改革を起こそうと考えている。不要な科目を切り落とせば、専門高校の授業に劣ることはない。その必要と不要を知るため、田村校長は協会にアンケートを依頼した。

 協会が役員と総務委員35人に対して行った総合学科高校における授業カリキュラムに関するアンケートでは、特に役立っている授業としてコンピュータシステム技術、建築施工、測量、土木施工などが高い結果を示した。逆に重要性が低いと思われる授業科目については、設備計画や工業科学などが挙がっていた。

 学校と協会支部との懇談会では、田村校長が「学校現場と社会との摺り合わせを行い、教育効果を上げられる方法が見えてくるようにしたい」とあいさつ。同校OBの若手技術者からは『在学中は『土木』というものを良く理解していなかった。就職してみると書類が多い仕事で、イメージと違った。在学中に測量の勉強をしていたことは役立った」。もう一人も「測量をメーンに仕事をしているが、授業でやっていたので理解しやすい。授業でもっと集中的にやれば、技術者として身につくのではないか」と話した。支部側からは「技術者も不足しているが、技能者もいない。学校の取り組みとして技能教育を考えるべきではないか」「会社に入っても、やれる仕事がなくて1~2年でやめてしまう者が多いのも悩み。作業系の資格を持っていれば良い」などの意見が出された。これに対して学校側も「生徒数が少ないので学校単位での指導は難しい。他校との連携での実習を考えている」と現状を説明していた。

 同校と中高支部は、これまでも現場見学や丁張り実習などで連携・協力体制にあったが、田村校長は支部に対して年間での連携をお願いしたいと考えている。総合学科高校は、外部講師を招くための予算もある。単発ではなく、毎週や毎月など定期的に来てもらうことが可能であり、外部講師を招いての授業は生徒のみならず教師のスキルアップにもつながると考える。

 今回の改革が動き出せば、全国的にもまれな取り組みになるという。建設業界と学校が連携してカリキュラムを変えていく流れは、他の総合高校まで広がるだろうか。取り組みが地元建設業への入職者増と離職者減につながることを期待したい。

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