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リニア経済効果推進協、JR東海へ要望/県内企業の受注拡大を

2017/08/25 山梨建設新聞

 リニア中央新幹線を建設しているJR東海の柘植康英社長など幹部が23日に来県し、後藤斎知事、さらに県内自治体や経済関係者で組織する「リニア中央新幹線建設に伴う経済効果推進協議会」と会談した。後藤知事や推進協議会では、「リニア建設は県内経済発展の好機」と県内企業の受注機会の拡大などを要望。柘植社長は「県内の企業は、工事現場に近いことが強み。その強みを活かして、さまざまな場面で活躍されることを期待している」と応じた。

 JR東海幹部の来県に合わせ、経済効果推進協議会が地元企業の受注機会拡大を要望した背景には、本県の厳しい建設関連企業の経営状況がある。

 県内では公共事業が縮減され、工事などの受注量が大幅に減少。そうした中、リニア建設で県内企業に新たな受注機会が生じることは、雇用の確保や地元企業の育成につながり、県内経済への波及効果は巨大になる。そのため、JR東海に地元企業の活用を要望した。

 要望書を提出した推進協議会の金丸康信会長(甲府商工会議所会頭)は「リニア建設は、県内経済の活性化に大きく貢献すると期待している。南アルプストンネル工事でも県内企業を活用いただいており、今後も県内企業のさらなる活用をお願いしたい。一日も早い開通へ、地元としても協力してまいりたい」と要請。

 推進協議会の顧問でもある後藤知事も、リニア建設の効果を県内に波及させる意味からも地元企業の活用を要望。「地元企業は工事現場に近いという優位性がある。本県のリニアは(地上を走行する)明かり区間が多く、(用地取得などの)地元の合意形成に資するためにも、特段のご配慮をお願いしたい」と述べた。

 要望内容は①本体工事の発注は、県内企業の受注機会拡大のため分離分割とし、JVの場合は地元枠の設定をお願いしたい②下請業者への発注は可能な限り県内企業を選定するよう元請業者に指導③本体以外の道路拡幅や付替工事などを施設管理者に委託し、地方自治体からの直接発注④調査・測量・設計業務も県内企業の受注拡大に配慮⑤建設資機材の調達でも、県内産材料や県内生産品などを活用すること。

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 会談の後、JR東海の柘植社長は「県内企業の方には強みがあり、それは現場に近いこと。強みを活かしてご協力いただくことに期待している。南アルプストンネル工事でも加わっていただいており、今後も要望を踏まえて対応していきたい」と述べた。

 金丸会長は「できるだけ配慮したいというお答えをいただき、心強く思っている。リニア建設は、工事による建設業界への経済効果、開通後は観光や運輸、流通業などへの経済効果が期待され、山梨にとって起死回生の事業である。今後もさらに要望活動を続けていきたい」と述べた。

 後藤知事は「県としても、県内企業の受注機会の拡大に加え、沿線住民への丁寧な説明やリニアへの理解を深めてもらうことなどを要望した。10年後の開業へリニア建設が進み、リニアによる山梨の発展へ最大限努力をしていきたい」とした。

 さらに、JR側から、工事が進捗しており、地元にさらなる協力をと要請があったことに触れ、「リニアによって、経済的にも暮らしの面でも向上していくよう努めていく」と述べた。

 同推進協議会の副会長でもある浅野正一県建設産業団体連合会会長(県建設業協会会長)も、リニア建設で地元企業の受注機会を拡大していくことが県内の建設関係団体の大きな課題ととらえており、今後も要望活動などに力を入れていく考えだ。

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 本県内のリニア建設は、南アルプストンネル工事、第四南巨摩トンネル工事が進み、長大橋梁などの設計も進展している。県や同協議会では、リニア建設の経済効果を県内に大きく波及させていくため、今後も受注機会の拡大を訴えていく。



【写真=金丸推進協議会会長(右)がJR東海の柘植社長(左)へ要望書を提出した】

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