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栃木県小山市

小山市、今年度は測量設計、総事業費55億 22年度着工へ、豊穂川に浸水対策重点事業

2020/04/04 日本工業経済新聞(栃木版)

 小山市の利根川水系1級河川豊穂川が、国土交通省が創設した「浸水対策重点地域緊急事業」に採択された。集中的に国の交付金支援を受け、河道拡幅、築堤、3橋の架け替え工事に着手するほか、市単独事業で沿川部一帯に桜堤を整備する。2020年度は上半期中に整備用地測量調査、大行寺橋地質調査、大行寺橋詳細設計、新川橋詳細設計、物件補償調査算定を委託する。21年度は用地取得に関わる諸手続きを進め、22年度の着工を目指す。当初計画していた29年度の完成予定を大幅に前倒し、25年度の完成を急ぐ。総事業費は約55億円を見込んでいる。

 20年度の排水強化対策事業費は2億5500万円を措置。主な配分額は用地費2400万円、委託料5400万円、補償費1億7400万円。18年度の豊穂川縦横断測量、19年度の地質調査とも三立調査設計(小山市)が担当。成果品が納入されている。

 19年度の豊穂川予備設計、詳細設計はいずれも大日本コンサルタント宇都宮事務所に委託。予備設計は終了し、詳細設計は9月末までの履行期限で繰り越した。豊穂川の堤防を嵩上げし、思川と同じ高さにすることで増水時に支流への逆流を防ぐ。

 指定区間は下流側の思川合流点(大行寺)~上流側の大日橋(立木)間の1260m。国の「都市基盤河川改修事業」を導入し、当初の工期は29年度まで。旧計画の総事業費は約42億円、新計画では交付金事業が約53億円、市単独事業が約2億円と試算した。

 市道1179号線に架かる大行寺橋は橋長15m、幅員2・8m。一般県道小山結城線の新川橋は橋長28・5m、幅員6m。市道257号線の大日橋は橋長20m、幅員9・8m。架け替え後の橋長は大行寺橋32m、新川橋44m、大日橋33mとする方針。

 各路線の道路交通が遮断しないよう仮設橋の設置と撤去が必須。新計画を叩き台に道路管理者や地元住民の意向を反映しつつ架設位置、道路法線、幅員構成の細部について協議する。豊穂川はブロック積み開水路。現況幅員約8mは約55mに拡幅する。

 豊穂川の右岸側は市街化調整区域、左岸側は市街化区域。右岸側の農地を買収する。買収に必要な面積は約3万3800平方mに及ぶ。思川堤防の天端幅は5m。豊穂川堤防の天端幅は思川と同様の規格にそろえる必要がある。

 市は単独事業で3m腹付けし、豊穂川堤防の天端を8mとする。腹付け部分3mが桜堤となり、沿川部を桜で修景する。現在、豊穂川の両岸には桜並木があり、夜間はライトアップされている。引き続き桜の名所を保護し、水害復興のシンボルとする。

 15年の関東・東北豪雨の際には線状降水帯が居座り、県内は48時間の降水量が600㎜を超える大雨を観測。1級河川思川の水位が急激に上昇し、行き場を失った農業用排水路の豊穂川の水が逆流。豊穂川は溢水し、一帯は甚大な浸水被害に見舞われた。

 市は関係者で構成する「市排水強化対策プロジェクト」を設置。抜本的対策の検討を重ね、16年7月の第3回会議で整備手法を決定。その後は国に対し財源獲得に有利な豊穂川の1級河川指定を要望し、19年7月に1級河川の指定を受けた。

 そんな矢先の19年10月に東日本台風が襲来し、浸水被害が再び発生した。市内の浸水被害は412戸(床上浸水223戸、床下浸水189戸)に達し、豊穂川の排水対策の練り直しを迫られた。より治水効果が高く、工期短縮を図る整備手法を選択。

 旧計画の思川との合流地点に逆流防止用の樋門を増設し、セミバック堤による河道を整備。現行樋門は2門で毎秒の処理能力が40立方m。その横に1門を増設し、1・5倍の毎秒60立方mの処理能力に拡大する案は不要になった。

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