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栃木県小山市

小山市排水強化対策 豊穂川流域に105億、小山栃木排水路に放水路、立木排水路は調節池

2020/12/15 日本工業経済新聞(栃木版)

 小山市は、豊穂川流域排水強化対策事業計画をまとめた。①豊穂川整備(河道拡幅、築堤、3橋架け替え)②公共下水道大行寺雨水排水区(調整池、雨水ポンプ場、雨水管渠)③小山栃木排水路整備(放水路新設)④立木排水路整備(調節池新設)⑤田んぼダム-の5事業に総額約105億円を投入する。これら5事業を2025年度までに完了させる。15年の関東・東北豪雨と同規模の災害が発生した場合、約8割の防災減災効果を見込んでいる。

 【豊穂川整備】

 19年7月に1級河川に指定された豊穂川は、20年度に国の浸水対策重点地域緊急事業に採択された。事業区間は下流側の思川合流部(大行寺)~上流側の大日橋上流(立木)間の約1400m。総事業費は約52億円。市単独事業の桜堤3mの腹付けは見送った。

 河道拡幅と築堤により毎秒40立方mを毎秒60立方mに拡大。橋梁は市道1179号線の大行寺橋、一般県道小山結城線の新川橋、市道257号線の大日橋を架け替える。築堤は思川と同じ規格とし、堤防高1・2m、天端幅5mのバック堤。

 橋梁架け替え工事は22~24年度の3カ年。築堤と護岸整備工事は22~25年度の4カ年。20~22年度は測量設計や用地取得にかかわる諸手続きが中心。集中的に国の交付金支援を受け、当初計画していた29年度の完成予定を大幅に前倒しする。

 【大行寺雨水排水区】

 公共下水道事業大行寺雨水排水区整備の事業箇所は大行寺の約70ha。雨水管渠築造工事は21~25年度の5カ年、ポンプ場整備工事は23~25年度の3カ年、調整池築造工事は24~25年度の2カ年。総事業費は約34億円を見込んでいる。

 雨水管渠は管径2200㎜を延長230m、管径1200㎜を延長490m布設。雨水ポンプ場は樋管や放流ゲートを備え、排水能力は毎秒1・5立方m。調整池は3万立方m。市街化区域の内水対策は、公共下水道雨水排水が効果的と判断した。

 【小山栃木排水路】

 20年度に準用河川に指定された小山栃木排水路は、21年度に総合流域防災事業の採択を目指す。事業区間は思川合流部~JR両毛線交差部付近の延長700m。河道拡幅、築堤、樋門施設1基、分水路(放水路)新設、市道橋の架け替え1カ所を計画した。

 既設水路からの分水路を思川河川区域外と河川区域内に新設する。既設水路の拡幅案は変更した。放水路は平常時は水門で閉鎖、増水時には水門を開放し排水する。排水能力は現行の毎秒15立方mから毎秒35立方mに拡大する。総事業費は約11億円。

 【立木排水路】

 立木排水路は21年度に準用河川に指定の予定。総合流域防災事業を導入し、22~25年度の4カ年で整備する。立木に水深2m、容量2万2000立方mの調節池を新設整備する。24時間の降雨量190・3㎜に対応できる。総事業費は約8億円。

 豪雨時に溢れた水を貯留し、市街地への浸水被害を軽減する。21年度は準用河川の指定手続きや測量、22年度は地質調査、調節池の予備・詳細設計、23年度は用地測量、24年度に用地買収、物件補償。25年度が工事。調節地には排水ポンプを設置する。

 【田んぼダム】

 田んぼダムの整備目標は1100ha(約3600カ所、貯留量220万立方m)のうち、309ha(1237カ所、貯留量92・7万立方m)の整備が完了している。国の多面的機能支払交付金の活用と市独自の補助を合わせ、土地改良区が進めている。

 排水口の操作により、田んぼに雨水を貯留。田んぼから排水路や河川への排水量を抑制し、総量で田んぼをダム化する。排水口は上下可動式の調整板を設置するだけで済み、田んぼが持つ貯留能力を有効活用できる。ただし、農家の理解と協力が不可欠。

 【関東・東北豪雨】

 15年の関東・東北豪雨の際には線状降水帯が居座り、県内は48時間の降水量が600㎜を超える大雨を観測。1級河川思川の水位が急激に上昇し、行き場を失った農業用排水路の豊穂川の水が逆流。豊穂川は溢水し、一帯は甚大な浸水被害に見舞われた。

 一帯の雨水排水は3系統に区分。北から小山栃木排水路(流域面積947・36ha)、中間の立木排水路(128・08ha)、南側の豊穂川(1607・38ha)。小山栃木排水路と立木排水路は、いずれも樋門を通じて思川に排水される。豊穂川は思川に直接合流する。

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