一体いつから、なぜ、「公共事業=悪・ムダ」というイメージが定着してしまったのか。この点について紺谷典子氏の著書「平成経済20年史」(幻冬舎新書)に、大蔵省(当時)が公共事業批判のキャンペーンをやったという興味深いエピソードが載っている。紺谷氏は、いつからか「公共事業悪玉論」が世の中の常識となったことに疑問を持った。
そこで大蔵省に「公共事業批判のキャンペーンをおやりになりましたか」と質問すると、あっさり認めたという。
本来は言うまでもないことだが、公共事業費は、国民の安心・安全、地域の活力、日本の成長力を高める社会基盤づくりの重要な予算である。
政府の平成22年度公共事業関係予算は5・8兆円となっている。過去を振り返ってみると、13年度の9・4兆円から21年度は6・4兆円へと32・3%も減っており、その時点で「公共事業関係予算の削減は、既に限界に達している」(平成21年6月、自民党国土交通部会決議文)と言われていた。
22年度はそこからさらに、史上最大の対前年度18・3%という下げ幅を記録している。反対に、急増しているのが社会保障費だ。公共工事の削減分が、そのまま社会保障費にまわっているとも言える。
新聞報道、ニュース番組、あるいは学校の教材。「公共事業=悪・ムダ」という意識を刷り込ませる内容がないかどうか目を光らせ、不当な表現にはきっちりと反論する必要がある。
いっそのこと、「公共事業」という単語を廃止したらどうだろうか。この4文字には、すでに悪のイメージが定着していまっており、もう拭いとれない。ほかの費目との兼ね合いはあるが、「治水」や、「歩道設置」「道路ひび割れ補修」など、場面が頭に浮かぶ呼び方を、もっと前面に出していく必要がある。このままでは未来が危ぶまれる。(本社・田中宇栄)